婚活の見取り図

婚約破棄の根拠は、婚約の条文ではない

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2026/9/10公開

婚約を解消しただけで、必ず慰謝料を払う・受け取るとは決まりません。 まず、結婚の約束がどのように成立したか、解消に至った事情、実際に出した費用を時系列に分けて記録します。指輪や結納金の返還も、損害賠償とは別に確認が必要です。

約束の確認

  • 結婚時期や両家への説明
  • 交わしたメッセージや書面
  • 相談所の成婚退会条件とは区別

解消までの経緯

  • いつ誰が何を伝えたか
  • 解消の理由と相手の説明
  • 一方的な通知だけで判断しない

お金と物

  • 式場などの支払明細
  • 指輪・結納金の授受
  • 取消料と返金の規約

言い出した側だけで結論を決めず、約束・経緯・支出を別々に残す

相談前に分けておく3つのもの

まず残す記録と、別に進める手続き

式場や旅行の予約をしていたら、取消しの期限を先に確認します。領収書、契約書、支払いを示す記録を保存し、返金額と残る負担を整理してください。相手と交わしたメッセージは前後を含めて残し、切り取った一文だけで事情を決めないようにします。

相談所を利用した場合、相手との婚約の問題と、相談所の退会・精算は相手も契約も異なります。退会しただけで相手への請求が終わったり、相手との問題が解決したりはしません。相談所の解約料と精算も別に確認してください。

自分の記録を作るときの順序

最初に「結婚するつもりだった」という気持ちと、外から確認できる出来事を分けます。いつ二人で結婚の時期を話したか、家族や友人への説明、式場の予約、住居や仕事に関する変更を、日付順に並べます。やり取りの画面を保存する場合は、送信者・日時と前後の会話が分かる形にします。相手のSNS投稿だけでは約束の内容を示せないこともあるため、異なる種類の記録を混ぜずに残すとよいでしょう。

次に、解消の連絡があった日、相手の説明、自分が返答した日を追記します。口頭で重要な話をした場合は、記憶が新しいうちに日時と要点を書き留めます。相手の行動を違法と決め付けた言葉を加えるより、実際に何を見聞きしたかを残すほうが相談時に使いやすくなります。

費用は「支払った額」と「返金された額」と「今後の請求」を分けます。式場の取消料が発生するなら、まず契約先から根拠と精算額を取り寄せます。まだ金額が確定していないものを、既に生じた損害として相手へ一括請求しないようにします。引っ越しや退職の準備をしていた場合も、契約書・領収書・取消通知をまとめます。

婚姻届を出した後の話とは違う

民法739条1項は婚姻の効力を届出に結び付けています。

婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

民法742条も、届出をしない場合を婚姻の無効事由に挙げています。

民法742条を開く

婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。一人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。二当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。

婚約の解消に、離婚の財産分与をそのまま当てはめることはできません。結婚相談所の「成婚退会」も事業者の契約上の区切りであり、婚約成立を自動的に証明するものではありません。成婚の定義の違いを確認してください。

損害賠償を考えるときの二つの根拠

事案によって、約束に伴う債務不履行を問題にする民法415条や、権利・法律上保護される利益の侵害を問題にする709条が検討されます。婚約の成立、解消の事情、損害と因果関係などを具体的に見なければ、どちらで請求できるかは決められません。

民法415条1項は次のように定めます。

民法415条1項を開く

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

民法709条は次のとおりです。

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

先に「別れよう」と言った人が必ず賠償する、という判定方法ではありません。 解消に至る双方の事情を確認します。金額も条文だけでは決まりません。

お金の話を分ける例

たとえば式場へ十万円を先に払い、八万円がもどったなら、いま出て行ったままのお金は二万円です。そこへ写真撮影の予約や引っ越しの費用があるときも、それぞれ別の契約として、いくら払い、いくらもどるのかを並べます。まだ予約を取り消していないなら、取り消し前の全額をそのまま損害として書かず、先にお店へいつまでならいくらもどるか聞きましょう。

また、指輪などを返してほしい気持ちと、式場に払ったお金を負担してほしいという話も別です。まとめて大きな金額を相手に告げる前に、何のために渡したものか、いつ渡したかを一つずつ確かめます。書面ややり取りが残っていないときは、そのこともそのまま相談先に伝えてください。

相手へ連絡する前に整理すること

感情の整理と法律上の請求は進む速さが違います。まず返してほしい物、費用として負担した物、説明を求めたいことを分け、どの記録で裏付けられるかを一覧にします。証拠がない項目は空欄のままにし、推測で日付や金額を補わないでください。

相手に連絡する場合も、支払期限や慰謝料の金額を独断で提示する前に、何を根拠に求めるか相談するとよいでしょう。相手との直接のやり取りが難しい事情があるなら、相談窓口へ連絡方法も含めて相談してください。期限がある契約の取消しは、相談を待つ間にも確認を進めます。

指輪・結納金は返還の理由を別に確かめる

結婚を前提に渡した物があっても、婚約解消だけで自動的に返還義務が確定するわけではありません。誰から誰へ、どのような目的で渡したか、現在どちらにあるかを記録し、贈与の趣旨や解消の事情を踏まえて相談します。返還を考える際には、不当利得の民法703条も検討の対象になります。

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

同704条には、悪意の受益者についての別の定めがあります。

悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

返す物の価値や返還方法を独断で決めず、証拠を持って弁護士に相談してください。法テラスや各地の弁護士会で法律相談先を探せます。相談所との契約トラブルには消費者ホットライン188もあります。

この記事で確かめたこと

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